伝統文化を知る

2026.03.05

週刊メールマガジン「伝検通信」 第97号

週刊メールマガジン「伝検通信」第97号をお届けします。

今週のトップ記事は外舘和子さんの「工芸文化の諸相」第2回。上巳(じょうし)の節句に合わせて、ひな人形を飾ったご家庭も多かったことでしょう。その人形と日本文化をめぐる話題です。

「クイズで肩慣らし」は、前回クイズの答え・解説と、「歳時記」の問題です。

伝検対策は、下記、公式テキスト、オンライン講座をご活用ください。

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目次

・ 「工芸文化の諸相」 第2回 
    人形という工芸領域―「顔」の表現、日本ならではの芸術性
・ 「クイズで肩慣らし」 第96回=「歳時記」
・ 伝検協会だより


「工芸文化の諸相」 第2回 
人形という工芸領域―「顔」の表現、日本ならではの芸術性

外舘和子=多摩美術大学教授、日本伝統文化検定協会副会長

人形作家・中村弘峰作「PUNK FLOW GIRL~苔のむすまで~」=「Kogei meets…出会いから生まれるかたち」展(1月10~23日)より(筆者撮影)

3月3日はひな祭り。日本では、女の子がいる家では、ひな人形を飾ることが多いだろう。5月の端午の節句には、男の子の健やかな成長を願う五月人形もある。

人形を、吉祥や祈りを込めて扱う習慣は、日本では長い歴史がある。人形を「ヒトガタ」と読めば、そのルーツは縄文時代の土偶あたりにまでさかのぼることができる。いにしえの土偶やはにわから、江戸時代に発達した御所人形や博多人形などに至るまで、日本の人形文化には歴史があり、表現の幅もある。一方、欧米にも「人形(ドール)」は存在するが、ドールに日本人ほどの思い入れはなく、どちらかといえば子供の玩具、ないしはちょっときれいな飾り物と見なされることが多い。しかるに、現代の日本の工芸展で「人形」という表現部門があることに外国人は驚くのである。

例えば、日本工芸会所属の作家たちが出品する日本伝統工芸展の全7部門には、陶芸・染織・漆芸・金工・木竹工・諸工芸(ガラスや七宝など)と並び「人形」部門があり、平田郷陽(ごうよう、1903~1981)のような人形の重要無形文化財保持者(人間国宝)もいる。また、日展の理事長を務めた日本芸術院会員に、工芸部門の人形作家・奥田小由女(さゆめ、1936~)がいる。今日の若手作家なら、博多人形の家に生まれた中村弘峰(1986~)が挙げられよう。

さらに興味深いことに、工芸はおおむね素材ごとに領域をくくるが、人形はやきものや木彫り、紙貼りなどさまざまな素材が含まれる。人形という工芸領域をくくる基準は、人や子供、動物など、その具象性であり、「顔」があることと言ってもよい。

その具象性ゆえに、日本人は人形作品に物語を読み取り、感情移入し、その人形の世界に浸る。人をモチーフにしたとしても、西洋由来の人体「彫刻」が、表面にこだわってはならないという教育や指導を行うのに対し、人形は実際の着物などのきれを用いた衣装を丁寧に着せたり、彩色したり、目鼻や口を繊細に描き、むしろ表面の作り込みを重視する。西洋的な彫刻と日本の工芸表現としての人形の表現姿勢は真逆に近いのである。

「人形は顔が命」とは、ひな人形のCMでも言われたりするが、私たち人間と同様「顔」を持つ人形に、日本人は深い精神性や芸術性を見いだしてきた。ひな人形や五月人形を宝物のように大切に代々受け継いでいく文化の中にも、人形に対する日本人ならではの深い愛着がある。そうした日本の歴史が、人形作家を生み、人形を今日の工芸領域の一つとして定着させてきたのである。


「クイズで肩慣らし」 第96回=「歳時記」

~伝統文化に関するさまざまな話題をクイズ形式でお届けします~

「きさらぎの望月のころ」に催される行事では花供曽(花供御)という、インパクトのある名のあられ菓子が振る舞われる。

第96回

問題:「願わくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」など多くの和歌を残した僧侶の歌人は誰でしょう。(答えと解説は次号で)


出題の城の写真(築城時の天守が残っている大正時代のもの)

【前回クイズの問題と答え・解説】
問題:地元の城の別名にちなんだプロ野球のチーム名は何でしょう。

答え:広島東洋カープ

解説:
天正17年(1589)に戦国武将の毛利輝元が築城した広島城は地名が「己斐(こい)」だったことや堀にコイが多くいたことから鯉城(りじょう)と呼ばれており、球団も英語でコイを意味するカープのニックネームを付けたそうです。広島城の天守は太平洋戦争の原爆投下で倒壊し、昭和33年(1958)に鉄筋コンクリート造りで復元されました。ちなみに、隣の山口県の伝統的工芸品である萩焼は、輝元が文禄・慶長の役で朝鮮から連れてきた陶工の李勺光、李敬兄弟が毛利家とともに広島から萩に移って開いた窯が起源とされています。弟・李敬の窯は長州藩の御用窯となり、輝元の孫・綱広から坂高麗左衛門(さかこうらいざえもん)の名を与えられ、現在も萩焼の名門、坂窯の当主として襲名されています。


伝検協会だより

▼お届けしている週刊メールマガジン「伝検通信」につきまして、3月26日配信の第100号を区切りとし、4月からは不定期配信とさせていただきます。これまで配信してきた記事や「クイズで肩慣らし」などのコンテンツは4月以降、公式ウェブサイト(https://denken-test.jp/)でご覧いただきます。メルマガは検定、合格者特典など協会からのお知らせを中心に随時配信します。引き続きご登録をお願いいたします。

 ▼伝検の合格者向けに、4月19日(日)に東京・国立能楽堂で開かれる「ふらっと狂言」のチケットをプレゼントします。野村万之丞、拳之介、眞之介の3兄弟による狂言劇とトークショーです。既に募集は締め切りましたが、希望者全員に提供できることになりました。チケットは3月中旬に発送予定です。


【編集後記】
3月に入り、少しずつ暖かい日も増えてきました。街中でも梅が見事な色を見せていて、今年は桜の開花も早くなるのではという予報も出ています。2月はあっという間に去りましたが、4月に向けて、新しいことに取り組むという方もおられるのではないでしょうか。ぜひ伝検の上級にもチャレンジしてみてください。

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