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2024.07.18

伝検ニュース

飛鳥Ⅲ、日本文化のキャラバンに=「旅する日本画」―湯河原で先行展覧会=

写真左/「旅する日本画」の作品について語る日本画家の平松礼二氏
写真右/「飛鳥Ⅲ」に展示される日本画が並ぶ町立湯河原美術館。
(いずれも6月27日、神奈川県湯河原町)

2025年に就航予定の大型客船「飛鳥Ⅲ(あすかスリー)」の船内に展示される日本画家・平松礼二(ひらまつ・れいじ)氏の作品を先行公開する展覧会が9月23日まで、同氏が名誉館長を務める町立湯河原美術館(神奈川県湯河原町)で開かれている。「旅する日本画―洋上の美術館・飛鳥Ⅲ」と題し、日本の四季を描いた作品などを展示。平松氏は飛鳥Ⅲについて、「日本の伝統文化を丸ごと海外に持って行って国際交流を図るという『文化のキャラバン』のようなものだ」と語り、世界に向けた日本文化の発信に期待感を示した。

また、美術館を運営する同町の内藤喜文(ないとう・よしふみ)町長も「これまで美術館を訪れてくれたお客さんとは異なる客層の人にも興味を持ってもらえるまたとないチャンス。これを機に湯河原町に足を運んでもらいたい」と、地域のPRにつなげたい意向だ。

展覧会は「日本の四季」「モネの池」の2部で構成。日本の四季では、サクラの木々が濃淡のあるピンク色で鮮やかに描かれた「さくらの季(とき)」や、黄色、オレンジ、深紅のモミジの葉を題材にした「池に浮かぶ紅葉」など30作品が展示されている。

飛鳥Ⅲは総トン数5万2000トン、乗客定員約740人のクルーズ船。日本文化を伝える数多くの美術品や工芸作品を船内に展示するのが特徴だ。同船を保有・運航する郵船クルーズの河村洋(かわむら・ひろし)常務執行役員は「工芸作品などを展示できるように意識して設計した。まさに動く洋上の美術館だ」と、こだわりを強調する。

2000年から10年まで「文藝春秋」の表紙を担当し、花などを題材に創作活動を続ける平松氏が飛鳥Ⅲに提供する作品の制作テーマは「世界を旅する日本画」。このほか、船内には漆芸家で人間国宝の室瀬和美(むろせ・かずみ)氏ら多くの芸術家の美術品・工芸作品も飾られる。

平松氏の作品を先行公開する湯河原美術館は、夏目漱石が滞在したこともあるという老舗旅館を改装して1998年に開館。観光面だけでなく町の教育施設としての役割を担っているほか、サクラ、新緑、モミジなど四季折々の景色を楽しめる庭園に隣接したミュージアムカフェは町民の憩いの場にもなっている。内藤町長は「今後も観光振興のために活用していく」と力を込めた。


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