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2024.09.19

伝検ニュース

飛鳥Ⅱ、クルーズで工芸家支援=「動く洋上美術館」、地方創生の一助にも=

写真上/高松港に停泊する大型客船「飛鳥Ⅱ」=高松市
写真下/「飛鳥Ⅱ」船内に展示される人間国宝・十四代今泉今右衛門さんの有田焼の絵皿

日本で最大級のクルーズ船「飛鳥Ⅱ」。豪華な設備のみならず、美術館並みの工芸作品が展示され、販売も行われている。1000人を超える乗客や乗組員が地方を訪れれば経済的な恩恵も大きい。同船を保有・運航する郵船クルーズは「各地の工芸作品や工芸作家とお客さまを結ぶことが、日本の伝統文化の継承・発展や寄港地の地方創生につながっていく」と強調する。 

◇船内に100点以上の工芸作品 

飛鳥Ⅱは総トン数約5万トン、全長240メートルと、日本船籍で最大規模を誇り、12階建ての巨大な船内には、400以上の客室、複数のショップやレストランのほか、劇場、プール、露天風呂まで備えている。その中でも目を引くのが、船内の至る所に並ぶ工芸作品。さながら「動く洋上美術館」だ。 

郵船クルーズは2021年に、重要無形文化財保持者(人間国宝)が数多く所属する公益社団法人「日本工芸会」と連携。船内のレセプションカウンターやエレベーターホール、レストランなどに、100点以上の工芸作品を展示している。クルーズ客はそこかしこでこれらの作品を楽しめるだけでなく、気に入ったものがあれば購入することも可能だ。 

◇乗客と地域の出会い促進

飛鳥Ⅱのクルーズには、資産家や経営者らも含め800人以上の乗客が一度に集う。こうした場を利用して、日本の伝統文化を発信するとともに、作品の販売などを通して工芸作家を支援する場をつくり上げた。人間国宝の陶芸家、十四代今泉今右衛門さんの紫陽花(あじさい)と宇宙空間をイメージした有田焼の絵皿を8月に購入した70代の男性は「乗船前からパンフレットを見て気になっていたが、実物を見て直感的に買うことを決めた。刺し身などの料理をのせてみたい」とほほ笑んだ。 

生活様式の変化に伴う需要減や、担い手の高齢化、後継者不足による伝統産業の衰退は全国共通の悩み。飛鳥Ⅱは、寄港地で工芸作家の窯元を訪れる観光ツアーを実施したり、地元食材を利用した料理を提供したりすることで、地域活性化への寄与も目指す。郵船クルーズは「ご当地ならではの体験はクルーズの大きな魅力の一つ。地域振興のためにも、お客さまと寄港地の人々の出会いや交流の場をさらに広げたい」としている。


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