伝統文化を知る

2024.10.03

伝検通信(メルマガ)

週刊メールマガジン「伝検通信」 第26号

週刊メールマガジン「伝検通信」第26号をお届けします。

今号のトップ記事は、和菓子の成型に使用される菓子木型を作り続けてきた伝統工芸士の話題です。

「クイズで肩慣らし」は前回クイズの答え・解説と、和紙・染織分野からの出題です。

11月から実施する2級および3級の第1回伝検の受験申し込みを受け付けています。公式テキスト、2級受験者向けオンライン講座の販売もスタートしています。ぜひお申し込みください。

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目次

・ 幸せ運ぶ「菓子木型」=和菓子文化を未来へ
・ 「クイズで肩慣らし」第26回(和紙・染織)=「琉球藍」
・ 伝検協会だより


幸せ運ぶ「菓子木型」=和菓子文化を未来へ

写真上/取材に応じる菓子木型職人の市原吉博さん=高松市
写真下/和菓子作りに使用される菓子木型(香川県提供)

和菓子作りに欠かせない「菓子木型」。全国でわずか数人しかいない職人の一人で
ある高松市の市原吉博さんは、現状に危機感を抱きつつ、「幸せを運ぶ木型を作り続ける」と、和菓子文化を未来につなぐために彫刻刀を握り続けている。

◇「手間を惜しむな、名をこそ惜しめ」

和菓子の成型に使用される菓子木型は、菓子のデザインと左右や凹凸が逆になるように彫られている。繊細な意匠が表現された美しさから観賞用としての人気も高まっており、菓子業界以外からも注目を集めているという。

その歴史は江戸時代に始まったといわれ、当時から和三盆糖(わさんぼんとう)と呼ばれる砂糖の生産が盛んだった香川県では、和菓子文化が花開き、多くの木型職人が腕を競った。

ただ、後継者不足などを背景に職人は減少の一途をたどり、四国では現在、市原さんのみとなった。24歳から菓子木型販売の仕事に携わり、28歳の時に職人へ。卓越した技能を持ち、その道の第一人者とされている「現代の名工」で、伝統工芸士にも認定されている市原さんには、国内外のファンから次々と依頼が舞い込んでいる。

「頼まれた仕事はできるだけやりたい」と語る市原さんは、工房の方針として「手間を惜しむな、名をこそ惜しめ」を掲げている。見た目にも美しく、人を楽しませる和菓子を作り出すためにも、「木型には、一切妥協しない」と言い切る。

◇菓子木型で笑顔に

市原さんはまた、菓子木型の材料にもこだわる。使用するのは四国の山で育った樹齢100年以上の山桜のみ。きめが細やかで堅く、割れにくいため、美しく彫れるという。「(木型には)いい菓子職人さんに巡り合い、幸せになってほしい」と、わが子のように愛情を込める。

「工房を訪れた人の笑顔を見るのが一番の喜び」と市原さん。菓子木型を多くの人に手に取ってもらうことで、「和菓子業界が少しでも元気になってくれればうれしい」と語る。

明るく気さくでユーモアにあふれる人柄だけに、多くの人が立ち寄る工房には笑顔が絶えない。千葉市から見学に訪れた高校の家庭科教員の女性は、購入した木型を手にしながら、「和菓子に興味があり、どうしても市原さんに会いたかった。子どもたちに見せるのが楽しみだ」とほほ笑んだ。

伝統工芸士 市原 吉博さんの木型工房サイト
https://www.kashikigata.com/


「クイズで肩慣らし」第26回(和紙・染織)=「琉球藍」

~伝検公式テキスト(好評発売中)のジャンルごとに出題します~

国の文化財保存技術である「選定保存技術」で作られた沖縄の伝統染織

第26回
問題:「藍染」は藍の葉を乾燥・発酵させた「すくも」を染料として使いますが、沖縄の伝統染織に欠かせない「琉球藍」では、別の方法で加工した染料が使用されます。この染料を何というでしょうか。
(答えと解説は次号で)


かんなで表面を削り取る技法で作られた、印象的な陶器(福岡県観光連盟提供)

【前回の問題と答え・解説】
問題:1975年に陶器として初めて国の伝統的工芸品に認定され、2017年には重要無形文化財にも指定された、ろくろを回しながら模様を付ける福岡県の陶器は何でしょう。

答え:小石原焼(こいしわらやき)

解説:小石原焼は福岡県東峰村(とうほうむら)で作られている陶器。かんなで表面を削り取って付ける「飛び鉋(とびかんな)」(写真右側2点)などの模様が特徴です。日用品に美を見いだす民芸運動の提唱者である柳宗悦(やなぎ・むねよし)と英陶芸家バーナード・リーチが小石原を訪れた際に「用の美の極致」と絶賛したことで、全国的に知られるようになりました。また、隣接する大分県日田市には、兄弟窯といわれる「小鹿田焼(おんたやき)」があります。


伝検協会だより

▼伝検協会の境理事長のインタビュー記事が米誌ニューズウィーク日本版ウェブサイトに9月26日、掲載されました。「日本の伝統文化は国際人必須の教養」などと、皆さまが伝検にチャレンジする意義を語っています。

記事はこちらから Newsweek Japan


編集後記

伝検通信第26号をお届けしました。今週は「木」「布」「土」といった、素材をめぐる話題が集まり、写真を眺めながらの編集作業が楽しく豊かな時間となりました。プラスチックや化学繊維とは異なり、自然の素材で作られたものには何か人を癒やす力があるように感じます。

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