2025.03.03
伝検通信(メルマガ)ひな人形に込められた願いと歴史

3月3日のひな祭りを彩るひな人形。現在は美しい飾り物として楽しむことが多いですが、起源は平安時代以前からの厄払いの道具にあります。日本では「人形(ひとがた)」に罪やけがれを託し、川に流したり、枕元に置いて厄払いを願ったりする風習があり、これが後のひな人形のルーツと考えられています。
平安時代の貴族たちの間では、「天児(あまがつ)」や「包子(ほうこ)」といった草木やわらで作られた人形が災厄を払うために使われていました。
室町時代になると、厄を移すために人形をなでる「なでもの」の風習が加わり、新しい人形を毎年用意して水辺に流す習慣が、次第に手元に残す形に変わります。また、この時期に贈り物として用いる習慣も生まれ、人形の役割が広がっていったと考えられます。
江戸時代に入ると、世の中が安定し、ひな人形はより華やかなものへと発展します。この時代、女性の幸せは良縁と結び付けられるようになり、大名家などでは、娘が豊かで幸せな人生を送れるようにと、より身分の高い人との婚姻を願いました。そこでひな人形の衣装も立派で華やかなものになり、ひな壇には多くの人形が飾られるようになります。一方、町人の間にもひな祭りが広まり、ひな飾りは自由に楽しむものとなっていきました。華やかになった背景には、未来の幸福を願い、前もって祝うことで幸せを引き寄せる「予祝(よしゅく)」の考え方があります。ひな飾りは、そうした願いを込めた未来予想図のようなものとも言われています。
ひな人形は、大人社会の厄払いや願い事の儀式から始まり、江戸時代に子どもの節句が誕生し、現在の形へと確立されました。その歴史を感じながら、今年もぜひひな祭りにひな人形を飾ってみてください。

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