2025.09.04
伝検通信(メルマガ)週刊メールマガジン「伝検通信」 第72号
週刊メールマガジン「伝検通信」第72号をお届けします。
今週のトップ記事では、歌舞伎の三大名作と人間国宝の片岡仁左衛門さんをめぐる話題をお伝えします。
「クイズで肩慣らし」は、前回クイズの答え・解説と、「金工・木漆工」の問題です。
第3回伝検(2級、3級)は11月1日(土)から来年1月12日(月・祝日)まで実施します。申し込みは1カ月前の10月1日(水)開始です。ぜひ、下記、公式テキスト、オンライン講座をご活用の上、チャレンジしてみてください。
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目次
・ 歌舞伎三大名作を通して芸の継承―人間国宝の片岡仁左衛門さん
・ 「クイズで肩慣らし」 第71回=「金工・木漆工」
・ 伝検協会だより
歌舞伎三大名作を通して芸の継承―人間国宝の片岡仁左衛門さん
時事通信記者 中村正子

今月の歌舞伎座で演じている「菅原伝授手習鑑」の菅丞相(菅原道真)役は
片岡仁左衛門さんの当たり役の一つ
今年は松竹創業130周年。京都に生まれた双子の兄弟、白井松次郎と大谷竹次郎が明治中期に設立した興行会社は、長年にわたって歌舞伎の興行を担ってきました。その節目の記念公演が東京・歌舞伎座での「三大名作」の通し上演です。
歌舞伎の三大名作とは、人形浄瑠璃の作品を歌舞伎化した「義太夫狂言」と呼ばれる演目のうち特に人気の高い「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」「仮名手本忠臣蔵」のこと。いずれも竹田出雲、三好松洛、並木千柳による合作で、江戸時代中期の1746年から48年にかけて相次いで初演されました。中でも赤穂浪士のあだ討ちを描いた「仮名手本忠臣蔵」は上演のたびに大当たりを取り、万病に効くという薬湯になぞらえて「独参湯(どくじんとう)」とも呼ばれます。
現在の歌舞伎公演は、さまざまな演目の名場面や舞踊を並べて上演する「見取り(みどり)狂言」が一般的ですが、「通し狂言」では長い物語を全編通して上演します。3月は「仮名手本忠臣蔵」が好評を博し、9月は、政争に敗れて大宰府に左遷された菅原道真(菅丞相=かんしょうじょう)を題材にした「菅原伝授手習鑑」。10月には源義経をめぐる人々が主人公の「義経千本桜」が続きます。
この3作品すべてに出演するのが、歌舞伎界を代表する立役の一人で人間国宝の片岡仁左衛門さん(81)です。「声良し、顔良し、姿良し」。時代物、世話物を問わず多くの当たり役を持ち、情感あふれる演技で観客を魅了しています。大阪生まれで屋号は松嶋屋。柔らかな上方なまりに何とも言えない色気があります。
仁左衛門さんは「仮名手本忠臣蔵」で、史実の大石内蔵助に当たる大星由良之助役を演じました。公演前には四十七士が眠る東京・泉岳寺に墓参。「赤穂浪士のお話の人気の基は『仮名手本忠臣蔵』だと思います。由良之助はその頂点のお役。大勢の人を束ねる人物になるかが一番大事です」と言います。
9月2日に始まった「菅原伝授手習鑑」では菅丞相役を演じています。1995年の初役以来、7回目。8月中旬には道真公を祭る京都・北野天満宮で公演の成功祈願を行いました。「丞相さまというのは、全国にお社があって、多くの信者がいらっしゃる。『勤めさせていただける』という気持ちが大事です。演技という演技がないので、台本を読み込み、気持ちになり切って自然体で動くしかない」と役の難しさを語っていました。
道真公にとって牛は神の使い。公演中は同役を演じた父や祖父にならって、牛肉や酒を口にしない精進潔斎(しょうじんけっさい)をして勤めます。楽屋には「南無天満大自在天神」と書かれた軸を掛け、毎日、水と塩を供えるそうです。
10月の「義経千本桜」で演じるのは、奈良・吉野の下市村(現在の下市町)のすし屋の放蕩息子・いがみの権太(ごんた)。親に勘当された「ならず者」とされる人物ですが、仁左衛門さんは「ならず者とはちょっと違うよね。悪であっても許せてしまうような、かわいいところがある」と解釈します。大阪弁でやんちゃできかん坊な子どもを「ごんた」と言うのは、いがみの権太が由来。仁左衛門さんは「関西ではよく、『この子はごんたでしゃあないなあ』と言うんですよ」と目を細めます。
三大名作には歌舞伎のさまざまな演技方法が含まれ、今回の通し上演には芸の継承の狙いもあります。仁左衛門さんとのダブルキャストで9月の菅丞相に挑んでいる松本幸四郎さん(52)は「おじさま(仁左衛門)の菅丞相を次につなげる役目としての責任を感じながら勤めたい」と強調。仁左衛門さんも「伝統の本質を伝える、自分の修業の場やね」との思いで公演に臨みます。そして、後輩たちには「(私の)背中を見て、追い掛けてほしい。せりふや手順を覚えて終わりにせず、台本を深く読み込むと気付くことがある。役に取り組む精神を伝えたいですね」と期待を込めました。
注:年齢は取材時のものです。
「クイズで肩慣らし」 第71回=「金工・木漆工」
~伝統文化に関するさまざまな話題をクイズ形式でお届けします~

スウェーデンで行われるノーベル賞授賞式後の晩餐会で用いられるカトラリーは、1991年から燕市の山崎金属工業の製品が採用されている(写真の製品ではありません)
第71回
問題:新潟県の三条市や燕市は、優れた金属加工技術を持つ「ものづくりの町」として知られています。そのきっかけは同地域で江戸時代に需要が急増したあるものを作っていたことがきっかけといわれています。それは何でしょう。(答えと解説は次号で)

豊臣秀吉画像(佐賀県立名護屋城博物館所蔵)
【前回の問題と答え・解説】
問題:安土桃山時代の1587年に、豊臣秀吉が京都の平安京大内裏(だいだいり)跡に建てた豪華な邸宅の名称は何でしょう。有名な陶器名と関係があります。
答え:聚楽第(じゅらくてい、じゅらくだい)
解説:聚楽第は関白となった豊臣秀吉が政庁兼邸宅として建て、4年後においの秀次に譲りましたが、関係が悪化して秀次は追放され切腹。聚楽第は竣工(しゅんこう)からたった8年で秀吉自らが徹底的に壊したため、その詳細は詳しくは分かっていません。茶人の千利休が陶工の長次郎に焼かせた「楽焼(らくやき)」は聚楽第のそばに窯があったので聚楽焼と呼ばれていたのが略されたものです。
伝検協会だより
▼伝検合格者向け特典を2件ご案内します。
まず、東京・歌舞伎座の観劇チケットです。伝検で学習して歌舞伎を観劇してみたいという方も多いと思います。伝検協会正会員である松竹株式会社のご協力で、今週号のトップ記事でも取り上げた片岡仁左衛門さんが出演する三大名作「義経千本桜」のチケットを若干数ご用意し、特別価格でご提供いたします.
2件目は協会正会員の株式会社ジャパンタイムズからのご提供で、日本の情報を英語で海外に伝える「The Japan Times Alpha」を20%割引の料金で定期購読ができます。
いずれの特典も、合格者には別途、ご案内メールをお送りしておりますのでご確認ください。
各種特典情報はこちらをご覧ください。
https://denken-test.jp/
▼伝検協会の正会員として、9月から出版社の株式会社プレジデント社にご入会いただきました。同社は着物雑誌「七緒」などを発行、伝統文化の情報発信にも取り組んでいます。協会としても同社との連携を深め、伝統文化や伝統産業の振興・発展に貢献したいと思っています。
【編集後記】
9月に入りましたが、前号でもふれた通り、秋に向かうとは思えない暑い日々が続いています。皆さまの体調管理はいかがでしょうか。せめて涼しいものを見て、涼しい気分を味わいたいものです。早く「芸術の秋」が来ないかなと毎日思っています。
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