2025.12.11
伝検通信(メルマガ)週刊メールマガジン「伝検通信」 第86号
週刊メールマガジン「伝検通信」第86号をお届けします。
今週のトップ記事は、NPO法人ウルシネクスト理事の中根多香子さんによる「漆のこころ」第4回です。お正月のテーブルを華やかにするポイントをお伝えします。
「クイズで肩慣らし」は、前回クイズの答え・解説と、「芸能」の問題です。
第3回伝検(2級、3級)は、来年1月12日(月・祝日)
伝検公式教材・参考書・サイト https://denken-test.jp/
目次
・ 「漆のこころ」 第4回 福を招く、お正月のテーブル
・ 「クイズで肩慣らし」 第85回=「芸能」
・ 伝検協会だより
「漆のこころ」 第4回 福を招く、お正月のテーブル
中根多香子=YUI JAPAN主宰、NPO法人ウルシネクスト理事

お正月のテーブル(筆者提供)
お正月は、年中行事の中で最も大切なハレの日。新しい年の実りと幸せを授けてくださる「歳神様」をお迎えする準備を、少しずつ始める頃となりました。
思い出すのは、子どもの頃のお正月。いつもよりあらたまった装いで、きものを纏(まと)う両親と、輪島塗のお重に詰めたおせちを囲んで新しい年を寿(ことほ)ぐ。元旦の家族だんらんの光景は、今も心に鮮やかです。
さて、「お正月のテーブルをもっとすてきにしたいけれど、どうすればいいの?」というお声をよくいただきます。そこで今回は、ささやかながら私流のポイントを三つご紹介します。
1、色あわせ
まず一つ目は、色の調和です。紅白・金銀が古典的なイメージでしょうか。おめでたい紅白、豊かさを表す金と銀は、王道の配色です。私はリネン類に清らかな白を選び、差し色に赤と金を効かせるのが好みです。色あわせを意識するだけで、ぐっとお正月らしさが増します。
2、縁起の良い花材と小物で演出
松や南天など縁起の良い花材を少しあしらうだけで、テーブルがいきいきと華やぎます。さらに、干支(えと)や吉祥文様の小物を添えると新春ムードが高まります。そして、忘れてはならないのが「祝い箸」。両端が細く「両口箸」とも呼ばれ、片方は人、もう片方は神様が使うという特別なお箸です。「神様と共に食事をいただく」。お箸にこめられた意味を知ると、自然への感謝と畏敬の念にあふれてやみません。
3、和の素材を取り入れる
最後に、和の素材を使うこと。和紙のランチョンマットや箸袋、水引など和の素材を取り入れると、テーブルに品格が生まれます。そして、和の素材といえば、やはり「漆」の出番です。漆塗りのお椀(わん)でいただくお雑煮は格別においしく感じられます。お重に屠蘇器(とそき)、銘々皿、ハレの漆器などもどこか誇らし気でうれしそう。テーブルをしつらえ、”漆オールスター”が並ぶ景色は晴れやかで、「日本に生まれて良かったな」と感じ入ります。
艶やかな漆器で歳神様をお迎えし、家族の健康と幸せを祈る―。そのひとときに、幼い頃の記憶がそっと重なります。伝統は、こうして暮らしの中で息づき、次の世代へと受け継がれていく。お正月のテーブルは、未来へ続く小さなかけ橋なのかもしれません。
「クイズで肩慣らし」 第85回=「芸能」
~伝統文化に関するさまざまな話題をクイズ形式でお届けします~

戦隊物のルーツとなったといわれる歌舞伎の演目
第85回
問題:特撮テレビドラマの戦隊ヒーローが主に5人なのは、ある歌舞伎演目の影響だといわれています。その演目は何でしょう。(答えと解説は次号で)

設問の行事を続けた記念として地域に建てられた像は、沖縄を除く全国に多く存在する。
(東京都文京区 大圓寺)
【前回クイズの問題と答え・解説】
問題:体内に潜むとされる三尸(さんし)の虫が60日ごとに抜け出して、天帝(天の神)に告げ口するのを防ぐため、人々が宴会などをしながら徹夜をする江戸時代に流行した行事を何というでしょう。
答え:庚申講(庚申待)
解説:中国の道教思想が元になった庚申の日という信仰があり、民間でも庚申講(こうしんこう)または庚申待(こうしんまち)が開催されました。青面金剛(しょうめんこんごう)が鬼を踏みつぶしている様子が彫られた石碑を庚申塔(庚申塚)といい、庚申講を続けた記念として各地に建てられました。申(さる)の字にちなんで「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿や猿田彦信仰と結び付くこともありました。2025年最後の庚申の日は12月17日です。
伝検協会だより
第3回検定(2級、3級)の試験期間終了まで、ほぼ1カ月となりました。申し込み受け付けは来年1月9日(金)まで可能で、試験最終日は1月12日(月・祝日)です。第3回の合格者にはカードサイズの和紙製合格認定書をお送りするとともに、伝統工芸の京染で作った伝検ロゴ入りカードケースと伝検オリジナルの和紙製メモパッドを進呈します。チャレンジをお待ちしております。
【編集後記】
ちょうど本通信のあとがきを準備しているとき(8日夜)に、青森県東方沖を震源とする地震が発生しました。読者の皆様は大丈夫でしたでしょうか。関東地方も横揺れが続きました。「天災は忘れたころにやってくる」と唱えたのは科学者・作家の寺田寅彦ですが、日々の備えの大切さを思った次第です。
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