伝統文化を知る

2025.12.11

コラム/エッセイ

「漆のこころ」 第4回 福を招く、お正月のテーブル

中根多香子=YUI JAPAN主宰、NPO法人ウルシネクスト理事

お正月のテーブル(筆者提供)

お正月は、年中行事の中で最も大切なハレの日。新しい年の実りと幸せを授けてくださる「歳神様」をお迎えする準備を、少しずつ始める頃となりました。

思い出すのは、子どもの頃のお正月。いつもよりあらたまった装いで、きものを纏(まと)う両親と、輪島塗のお重に詰めたおせちを囲んで新しい年を寿(ことほ)ぐ。元旦の家族だんらんの光景は、今も心に鮮やかです。
さて、「お正月のテーブルをもっとすてきにしたいけれど、どうすればいいの?」というお声をよくいただきます。そこで今回は、ささやかながら私流のポイントを三つご紹介します。

1、色あわせ

まず一つ目は、色の調和です。紅白・金銀が古典的なイメージでしょうか。おめでたい紅白、豊かさを表す金と銀は、王道の配色です。私はリネン類に清らかな白を選び、差し色に赤と金を効かせるのが好みです。色あわせを意識するだけで、ぐっとお正月らしさが増します。

2、縁起の良い花材と小物で演出

松や南天など縁起の良い花材を少しあしらうだけで、テーブルがいきいきと華やぎます。さらに、干支(えと)や吉祥文様の小物を添えると新春ムードが高まります。そして、忘れてはならないのが「祝い箸」。両端が細く「両口箸」とも呼ばれ、片方は人、もう片方は神様が使うという特別なお箸です。「神様と共に食事をいただく」。お箸にこめられた意味を知ると、自然への感謝と畏敬の念にあふれてやみません。

3、和の素材を取り入れる

最後に、和の素材を使うこと。和紙のランチョンマットや箸袋、水引など和の素材を取り入れると、テーブルに品格が生まれます。そして、和の素材といえば、やはり「漆」の出番です。漆塗りのお椀(わん)でいただくお雑煮は格別においしく感じられます。お重に屠蘇器(とそき)、銘々皿、ハレの漆器などもどこか誇らし気でうれしそう。テーブルをしつらえ、”漆オールスター”が並ぶ景色は晴れやかで、「日本に生まれて良かったな」と感じ入ります。

艶やかな漆器で歳神様をお迎えし、家族の健康と幸せを祈る―。そのひとときに、幼い頃の記憶がそっと重なります。伝統は、こうして暮らしの中で息づき、次の世代へと受け継がれていく。お正月のテーブルは、未来へ続く小さなかけ橋なのかもしれません。


カテゴリー: コラム/エッセイ

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