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週刊メールマガジン「伝検通信」第28号をお届けします。
今号のトップ記事は、おススメの庭園に関する話題です。
「Sustainable Japan Magazine」7月号から「<ポートランド日本庭園>の文化・教育担当者が選ぶ日本で見るべき5つの庭園」をお届けします。8月1日配信の本通信第18号の「協会だより」で一度取り上げていますが、改めてトップ記事として配信します。
「クイズで肩慣らし」は前回クイズの答え・解説と、建築・庭園・美術分野からの出題です。
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目次
・ <ポートランド日本庭園>の文化・教育担当者が選ぶ日本で見るべき5つの庭園
・ 「クイズで肩慣らし」第28回(建築・庭園・美術)=「仏教寺院」
・ 伝検協会だより
<ポートランド日本庭園>の文化・教育担当者が選ぶ日本で見るべき5つの庭園
ライター:中和田ミナミ
香川県の栗林公園。約75ヘクタールの広大な敷地には、6つの池と13の 「山」がある。
(栗林公園提供)
<ポートランド日本庭園>で文化・教育プログラムを担当する中西玲人上席執行役員に、日本国内で見るべき日本庭園を5つ挙げてもらった。日本国内には良い庭園が多いので選定するのは難しいとしながらも、彼が最初に名前を挙げたのが香川県高松市にある<栗林公園>だ。
「大名庭園で有名なのは、水戸にある<偕楽園>(茨城県)、岡山の<後楽園>(岡山県)、金沢の<兼六園>(石川県)で「日本三名園」と呼ばれています。しかし私は日本三名園と同等に美しく、クオリティが高いと感じているのが<栗林公園>の庭園です」と語る。
また名園が数多くある京都の庭も外せないという。「京都にある別世界の庭は一般には非公開なのでそこは外しますが、一般公開されている中でも圓通寺や三千院など良い庭園はたくさんあります。でもその中から敢えてひとつ選ぶとしたら私は<桂離宮>だと思います」と、宮内庁が所轄する、皇族である八条宮が親子二代に渡り、江戸時代に京都・桂につくった別荘を挙げた。
その他、水と一体となった福井の<養浩館庭園>、禅僧で画家の雪舟が作庭したと言われる<常栄寺雪舟庭>、現代美術作家・杉本博司がつくったゲストハウス<和心>の庭も、わざわざ足を運ぶ価値があるという。次回の旅のディスティネーションに、この5つの日本庭園を巡ってみるのはいかがだろうか。
◆1 栗林公園
国の特別名勝に指定されている、回遊式の大名庭園。江戸時代につくられた大名庭園である南庭と、明治時代以降に整備された北庭で構成される。約75ヘクタールの広大な敷地には、6つの池と13の築山を配し、歩くごとに景色が変わり訪れる人の目を楽しませる。この庭園の前身は、江戸時代にこの地を治めた高松松平家の大名屋敷だった場所で、代々の藩主により、庭は美しく整えられていった。なかでも江戸時代初期(17世紀)に建てられた数寄屋造りの<掬月亭(きくげつてい)>は建築的な素晴らしさもさることながら、建物内から見る庭園の景色は格別だ。1965年に建築家・山本忠治の設計により開館した<讃岐民芸館>では日本各地の伝統的な民芸品や、高松にゆかりのある建築家ジョージ・ナカシマがデザインした家具も展示されている。また、この民芸館の表庭と中庭は、<足立美術館>(島根県)の庭の作庭で知られる中根金作が手掛けているのでこちらも必見だ。
香川県高松市栗林町1‐20‐16 開園時間:日の出~日没まで。無休 入園料:410円
https://www.my-kagawa.jp/
◆2 桂離宮
桂離宮は、日本の洗練された宮廷文化のもつ美意識を体現するものとして高く評価され、最高の名園と言われる日本庭園である。17世紀の初めに八条宮初代智仁親王により造営が始まり、その王子の智忠親王による大規模な増築などにより、現在のような形に整えられた。桂離宮が位置するのは京都の南西部、古くは平安時代に貴族が多く別荘を建てた地。竹垣に囲まれた約69,000㎡に及ぶ敷地の西側には、主要部となる書院群が雁行して建ち、その前方にある池の周辺には、茶室などの庭園建築が配置されている。桂離宮の美は、建築と庭園の調和にあると言える。例えば、建具を開放して創り出される室内と庭園が融合した生活空間は、四季折々に移り変わる自然の美しさを愛でる日本人の伝統的な生活態度を写し出したものといえる。宮内庁が所轄する庭園で見学には事前に申し込みが必要である。
京都府京都市西京区桂御園 要事前申し込み。休園:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/28~1/4)、行事等が行われる日 問い合わせ/宮内庁京都事務所参観係 電話075-211-1215
https://kyoto-gosho.kunaicho.go.jp/katsura-rikyu
https://sankan.kunaicho.go.jp/english/index.html
◆3 養浩館庭園
この日本庭園の特筆すべき点は、優れた水の造形だろう。福井城下に五重にめぐらされた堀の外堀沿いにありことから、その豊富な水を庭に取り込み、優美かつ幽玄な「水の庭園」がつくられたのである。作庭は江戸時代初期~中期にかけてで、福井藩主・松平家の別邸としてつくられたものである。池は正方形に近い形で敷地一杯に大きくとられ、池の中に中島を配していないことが特徴の一つである。視界を遮られることなく続く伸びやかな水面と、水際いっぱいに建てられた建築が池と一体となり、建物の中で過ごしていると、水面に空や月が映り込んでいる風景を眺めることができ、水に浮かぶ舟の上に滞在しているかのような錯覚を覚える。ちなみに水辺に建つ数寄屋建築は1945年の空襲で灰燼に帰したが、発掘された遺構の上に直接建物が復元され、屋敷から庭を眺める視線の高さなど焼失前と同じ状態に保たれている。
福井県福井市宝永3-11-36 開園時間:9時~19時 (11月6日~翌年2月末日までは17時閉園。
http://www.fukuisan.jp/ja/
◆4 和心
南アルプスを望む山梨県北杜市にある文化施設・清春芸術村。廃校になった小学校跡地を1980年にアートサイトとして生まれ変わらせたこの施設には、建築家・谷口吉生や安藤忠雄が設計した美術館などをはじめ名建築が建つ。その施設のゲストハウスとして、現代美術作家・杉本博司と建築家・榊田倫之による建築設計事務所<新素材研究所>が手掛けたのが<和心>(2019年竣工)。通常非公開の特別な施設だ。このゲストハウスの庭は杉本博司の手によるもの。ゲストハウスの建物扉を開くと、庭と建築が一体となる仕掛けだ。杉本の手による庭と言えば、杉本自身が立ち上げた財団が運営するアートサイト<江之浦測候所>(神奈川県)が知られているが、住宅サイズの親密な雰囲気のこの庭も、名庭園というべきものがある。
山梨県北杜市長坂町中丸2072 開館時間(清春芸術村)10:00~17:00(
https://www.kiyoharu-art.com/
◆5 常栄寺雪舟庭(山口県)
雪舟(1420年~1506年)は室町時代の禅僧で、彼の描いた「山水図」など6点が国宝に指定されるなど、水墨画の巨匠として知られる人物である。その雪舟により作庭されたと言われるのがこの庭園。文化に造詣の深かった室町時代の守護大名、大内政弘が別邸として建てたもので、庭は雪舟に命じて築庭させたといわれている。庭園は枯山水を用いた池泉回遊式庭園で、寺に面する南側以外の三方を林地で囲まれた谷地に築造され、前に心字池、東北には枯滝が設けられている。また、立石の手法も独特のもので室町時代の庭園の姿を今日に伝え、国の史跡・名勝に指定されている。ちなみに本堂前にある枯山水庭園「南溟庭(なんめいてい)」は昭和を代表する作庭家・重森三玲が手掛けたもの。海をイメージした白砂と苔の築山による庭園で、こちらも見逃さず見学したい。
山口県山口市宮野下2001-1 開園時間:8:00~17:00(11月~3月は16:
http://sesshu.jp/
Sustainable Japan Magazineのウェブサイトはこちら
<ポートランド日本庭園>の文化・
「クイズで肩慣らし」第28回(建築・庭園・美術)=「仏教寺院」
~伝検公式テキスト(好評発売中)のジャンルごとに出題します~
日本で最初の本格的な仏教寺院
第28回
問題:飛鳥時代の596年に豪族・蘇我馬子が創建した、日本で最初の本格的な仏教寺院は何でしょうか。
(答えと解説は次号で)
江戸時代から使われ続けている大工道具。 国の伝統的工芸品にも指定されている。
【前回の問題と答え・解説】
問題:安土桃山時代に落城した三木城があった兵庫県三木市は、 当時、壊滅した町の神社仏閣や家屋の再建をきっかけに、 大工道具を含む刃物の産地として発展しました。 その刃物の名称は何でしょうか。
答え:播州三木打刃物(ばんしゅうみきうちはもの)
解説:織田信長の命を受けた羽柴秀吉によって三木城は落城し、その影響で三木の町は壊滅しました。秀吉は神社仏閣や家屋の再建のため、全国から大工を招きました。同時に大工道具が必要となり、鍛冶職人も集まり、三木の鍛冶産業が発展しました。その後、江戸時代には、江戸の町の家屋建築に三木の大工道具が広く使用され、「播州三木打刃物」として全国的に知られるようになりました。1996年には国の伝統的工芸品に指定され、現在もその技術が継承されています。
伝検協会だより
伝検協会の正会員である松竹が事務局を務める一般社団法人「東銀座エリアマネジメント」が10月10日に実施した清掃活動に参加しました。同法人は、歌舞伎を含め伝統文化を発信し続ける東銀座のブランド確立や、住民や在勤者、観光客らの交流促進を目指しており、清掃活動もその一環です。当日は、松竹、時事通信のほか、築地警察署、地元町内会など50以上の企業・団体から約130人が午前9時に集合。たすき、トング、ごみ袋を手に、ごみ拾いを行いました。大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手は高校時代に「ごみを拾うことで運を拾う」と教わって以来、意識的に実践しているそうです。自然にごみ拾いをできるようになれば、何かいいことが起こるかもしれません。
編集後記
伝検通信第28号をお届けしました。トップ記事を読みながら、庭園の美しさは、季節ごとの移り変わりにもあると感じました。協会がある東銀座かいわいでも、10月中旬を過ぎて街の木々の葉がほんのりと色づき始めています。本格的な紅葉の季節はまだ少し先ですが、通りごとの街路樹を愛でつつ銀座散歩を楽しみます。