神霊や過去の幽霊など、霊的な存在が主人公となる能の形式の名称は何でしょう。

夢幻能(むげんのう)

能は大きく「現在能」と「夢幻能」に分けられます。生きた人間のドラマを現在進行形で描くのが「現在能」。一方、「夢幻能」は神や鬼、幽霊といった異界からやって来た霊的存在が昔を思い、その土地にまつわる伝説を振り返ったり、過去の物語を再現したりするのが特徴です。人間の心理を深く描き出せる「夢幻能」は、世阿弥が父の観阿弥が志した幽玄を受け継いで確立した劇形式です。

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週刊メールマガジン「伝検通信」第6号をお届けします。
伝検公式ウェブサイト(https://denken-test.jp)をご覧になりましたか。伝検の詳細や最新情報に加えて、「伝統文化をよく知る」コーナーでは、日本の伝統文化にまつわるクイズ・記事・コラムなどがあり、読みどころが満載です。
今号は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が伝統的な工芸産業を支援する「MUFG工芸プロジェクト」を紹介します。
「クイズで肩慣らし」は前回クイズの解答・解説と、茶道・和菓子・日本茶分野からの出題です。
7月末までにメルマガ登録した方の中から、抽選で100人に公式テキスト(今夏刊行予定)をプレゼントするキャンペーンも引き続き実施中です。
それでは第6号スタートです!


目次

・ 「つなぐ力」で伝統工芸支援 革新・変革考えるきっかけに―MUFG
・ 「クイズで肩慣らし」第6回(茶道・和菓子・日本茶)=「新茶」
・ 伝検協会だより


「つなぐ力」で伝統工芸支援 革新・変革考えるきっかけに―MUFG

写真/【MUFG工芸プロジェクト】三菱UFJ銀行名古屋ビルで開かれた
「有松・鳴海絞(ありまつ・なるみしぼり)」体験会
=2024年2月(MUFG提供)

金融機関が持つ「つなぐ力」を生かしたい―。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2023年夏に、陶磁器、漆器、織物といった伝統的な工芸産業を支援する「MUFG工芸プロジェクト」をスタートさせた。後継者不足などの理由から危機的な状況に置かれている伝統工芸の現状を踏まえ、プロジェクトのリーダーである飾森亜樹子(しきもり・あきこ)チーフ・コーポレートブランディング・オフィサーは「工芸に携わるすべてのステークホルダーをつなげるプラットフォームづくりを進めることが、伝統工芸を支援することになる」と強調。「今年度はグループ従業員12万人を巻き込む仕組みをつくるとともに、具体的な支援活動も強化し、プロジェクトを飛躍させたい」と力を込める。

◇なぜ金融機関が工芸支援

伝統的工芸品産業振興協会によると、2016年時点の伝統的工芸品の従業員数(約6万2700人)と生産額(約960億円)は、それぞれ1980年ごろと比べて8割程度減少。こうした現状を踏まえ、MUFG工芸プロジェクトは、社会貢献活動の一環として、融資など本業の金融だけではできない活動を進める狙いで企画された。

MUFGはパーパス(企業の存在意義)として「世界が進むチカラになる。」を掲げ、社会貢献活動の優先領域の一つとして「文化の保全と伝承」を打ち出している。工芸を選んだ理由に関して、飾森氏は「工芸は伝統を紡いできただけでなく、時代に応じて挑戦・革新を繰り返してきた。現代の企業にも求められるもので、企業人としてどうやって変革していくのか考えるきっかけや、学び、気付きになる」と指摘。その上で「未来に向け変わっていく姿を見せることが、MUFGの企業価値を高めることにもなる」と狙いを語る。

金融機関と伝統文化の関係は決して薄くなく、伝統的に地域で受け継がれている工芸などをめぐっては、さまざまな取り組みが行われている。山口銀行は萩焼などを展示する「やまぎん資料館」を運営。琉球銀行は沖縄を代表する伝統的な染色技法の一つである「紅型(びんがた)」のデザインコンテストを開催している。日本を代表する金融機関であるMUFGが本格的な伝統工芸産業の支援に乗り出したことで、今後、こうした動きが加速する可能性もありそうだ。

◇情報発信強化、次世代支援も

MUFGはプロジェクトの第1弾として、昨夏に全国各地の職人の伝統工芸品を紹介する展示会を三菱UFJ銀行本館(東京)ロビーで開催。今年2月には、三菱UFJ銀行名古屋ビルで、子どもから大人まで参加できる伝統的な染色技術の「有松・鳴海絞(ありまつ・なるみしぼり)」の体験会を実施した。

今後は、政府・地方自治体や関連団体、民間企業などによる伝統工芸振興への取り組みを有機的につなげる仕組みづくりを目指す考え。飾森氏は「工芸の技術の研さんや革新を起こさせるような新しいアイデアの源泉となれば」と期待を込める。今年度は、次世代の作り手支援にも力を入れ、工芸を学ぶ学生への支援・表彰制度の創設、セミナー・講座の開設などを検討。同時に、消費者側の意識改革や啓発、各地各団体のさまざまな活動をつなぎ「見える化」する情報発信にも注力する方針だ。


「クイズで肩慣らし」第6回(茶道・和菓子・日本茶)=「新茶」

~伝検公式テキスト(今夏刊行予定)のジャンルごとに出題します~

第6回
問題:新茶の季節到来。お茶は中国に渡った遣唐使や留学僧によって日本に伝来したとされています。805年に中国から茶の種と喫茶の風習を持ち帰り、お茶を栽培した留学僧は誰でしょう。

【前回の答えと解説】
問題:枯山水の石庭で有名な世界遺産「龍安寺(りょうあんじ)」は、ある英国の王族が公式訪問した際に絶賛したことから、世界的に有名になりました。その訪問者とは誰でしょう。

答え:エリザベス女王

解説:龍安寺は室町幕府の有力者だった細川勝元が1450年に創建した禅寺。枯山水は、石や砂、植物、地形を利用し、水を使わずに水の流れを表現する庭園形式で、 限られた空間に無限の広がりを感じる石庭が室町時代の禅宗寺院で特に発達した。1975年にエリザベス英女王が龍安寺を公式訪問した際に石庭を称賛したことから、当時の禅ブームの後押しもあり、世界的に有名となった。1994年にはユネスコ世界遺産「古都京都の文化財」に登録された。


伝検協会だより

伝検協会の新たな会員として、日本旅行、松竹、西武ホールディングス(以上正会員)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(賛助会員)の4社に加わっていただきました。

多くの伝統文化・伝統工芸の体験型ツアーを企画する日本旅行、東京・銀座で歌舞伎座を運営する松竹、「スポーツ・アーツ&カルチャー事業戦略部」を設立して文化関連事業を進める西武、「MUFG工芸プロジェクト」を立ち上げた三菱UFJと、それぞれ伝統文化や伝統工芸の支援に積極的に取り組まれています。

伝検協会としても今後、各社との連携を一段と強化し、伝統文化や伝統産業の継承・発展に貢献したいと思っています。


【編集後記】

伝検通信第6号をお届けしました。毎年、次世代に残したい伝統工芸、伝統文化が消えていく中で、「これではいけない」と支援する企業や応援する人が増えています。まずは知ることから。伝統文化を知る際に適切な「知のパッケージ」がまとまっている伝検にご期待ください(坂本)。