神霊や過去の幽霊など、霊的な存在が主人公となる能の形式の名称は何でしょう。

夢幻能(むげんのう)

能は大きく「現在能」と「夢幻能」に分けられます。生きた人間のドラマを現在進行形で描くのが「現在能」。一方、「夢幻能」は神や鬼、幽霊といった異界からやって来た霊的存在が昔を思い、その土地にまつわる伝説を振り返ったり、過去の物語を再現したりするのが特徴です。人間の心理を深く描き出せる「夢幻能」は、世阿弥が父の観阿弥が志した幽玄を受け継いで確立した劇形式です。

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週刊メールマガジン「伝検通信」第9号をお届けします。

伝検公式ウェブサイト(https://denken-test.jp)では、伝検の詳細や最新情報が随時更新されています。ぜひご覧ください。

今号は、一般社団法人日本伝統文化検定協会の白洲信哉副会長による寄稿「伝統文化と私」をお送りします。

「クイズで肩慣らし」は前回クイズの答え・解説と、陶磁器・ガラス分野からの出題です。

7月末までにメルマガ登録した方の中から、抽選で100人に公式テキスト(今夏刊行予定)をプレゼントするキャンペーンも引き続き実施中です。

それでは第9号をお楽しみください。


目次

・ 伝統文化と私(一般社団法人日本伝統文化検定協会副会長 白洲信哉)
・ 「クイズで肩慣らし」第9回(陶磁器・ガラス)=「江戸切子」
・ 伝検協会だより


伝統文化と私

一般社団法人日本伝統文化検定協会副会長
白洲信哉

一般社団法人日本伝統文化検定協会 白洲信哉副会長 / 撮影:喜多村みか

この度、一般社団法人「日本伝統文化検定協会」副会長に就任した白洲信哉と申します。どうかよろしくお願い致します。

「伝統文化と私」と言うことでまず浮かぶのは、小学5年生の冬休みに祖母の白洲正子との何気ない会話から始まった聖徳太子の旅だった。三輪山から法隆寺に二上山向こうの太子御陵まで、それを機に取材旅行に同行、学生時代専攻したのは考古学だった。また、日常使っている汚い器たちや、家のいい場所に鎮座していたモノが、「骨董(こっとう)」と言われるジャンルに属するモノと知ったのも、大学に入り祖父母と同居してからだ。「三つ子の魂」ではないが、若い時分の経験値が今の礎であり、それがそのまま生業になって今に至っている。

僕らの伝統文化を乱暴に一言で申し上げれば「儚(はかな)さ」に「美」を見出してきた天才だと思う。ギリシャ神殿に代表される石造り、大理石の「永遠の美」と対極の、時の流れに逆らうことなく継ぎ繕い、春に咲く一瞬の桜や月の満ち欠けに、一つの食材を「走り、旬、名残」と、物事の浮かんでは消える「もののあはれ」を多様に表現し、いかに世界でも大変ユニークな位置付けであるか、微力ながら書き記してきたつもりだが、まさに今が伝統文化を繋(つな)ぐラストチャンスだと思う。

明治のご維新以来世界に目を向け、敗戦から高度成長期の東京オリンピックに続く先のオリンピックと、加速度的に世界へ門戸を開いてきたが、言い方を変えるなら自らの足元にある過去の「伝統」を捨てることで、経済成長を果たしてきたように思う。伝統文化とは消費されず「循環」していくもの、僕が愛玩する「古美術」と言われるジャンルなどその最たるもので、伝世してきたモノの「一時預かり人」として次の世代へバトンを渡す役割を担っている(はずである)。今回の試みがその一助となることを切に願いつつ、まずは、広く学ぶことで個々の数寄(すき)へと深化すれば理想的であるし、僕も不案内の文化に触れるきっかけにしたいと思っている。

文筆家、アートプロデューサー


「クイズで肩慣らし」第9回(陶磁器・ガラス)=「江戸切子」

~伝検公式テキスト(今夏刊行予定)のジャンルごとに出題します~

江戸切子

第9回
問題:ガラスの表面に細かい線を刻むことで文様を表現する「江戸切子」。代表的な文様の一つで、切子面の繊細なカットが光を受けて輝くさまを名付けた写真の文様名は何でしょう。

【前回の答えと解説】
問題:能舞台を模した舞台装置を使い、能や狂言を取り入れた歌舞伎の演目で、「勧進帳」「土蜘蛛」「船弁慶」などに代表される演目を何と言うでしょう。

答え:松羽目物(まつばめもの)

解説:松羽目とは、歌舞伎の舞台の正面に老松を描いた舞台装置のこと。能や狂言をもとにして作られた演目に使われます。「勧進帳」は江戸時代に初めて松羽目を使って上演された演目と言われており、能や狂言のように格調の高いものにしようという理由から作られました。その他にも、能をもとにした「船弁慶」「土蜘蛛」、狂言をもとにした「身替座禅(みがわりざぜん)」「素襖落(すおうおとし)」など、多くの演目が現在でも上演されています。


伝検協会だより

▼伝検の公式サイトに模擬問題を掲載しました。公式テキスト(今夏刊行予定)を構成する①陶磁器・ガラス②金工・木漆工③和紙・染織④建築・庭園・美術⑤伝統色・文様⑥茶道・和菓子・日本茶⑦食文化・歳時記⑧芸能―の8分野ごとに、それぞれ2級と3級に相当する問題を本番同様の4肢択一式で出題。検定試験のイメージや、2級・3級のレベル感をつかんでいただけます。ぜひトライしてみてください。

▼伝検協会の境理事長のインタビューが掲載された中国の「人民日報海外版日本月刊」6月号が発行されました。インタビューで理事長は、日本の伝統文化の魅力や受験者にとっての伝検の価値などについて語っています。

ネット版記事はこちら 日本の伝統文化を如何に継承するか | 人民日報海外版日本月刊
(peoplemonthly.jp)

雑誌電子版はこちら 人民日報海外版日本月刊|2024年6月号
(jnocnews.co.jp)


【編集後記】

伝検通信第9号をお届けしました。各所で伝検の趣旨をお伝えすると、賛意を示して下さる方が多く、嬉しくなります。また皆様から教えていただく、伝統文化の持つ精神性や伝統工芸の技術がもたらした集積にも驚きます。伝検通信でも引き続き、さまざまな情報をお届けします。ご期待ください。