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週刊メールマガジン「伝検通信」第92号をお届けします。
今週のトップ記事は、白洲信哉さんの「多様なるジャパン」 第15回です。杉の魅力をお伝えします。
「クイズで肩慣らし」は、前回クイズの答え・解説と、「歳時記」の問題です。
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目次
・ 「多様なるジャパン」 第15回 杉(桶、樽、酒林…)
・ 「クイズで肩慣らし」 第91回=「歳時記」
・ 伝検協会だより
「多様なるジャパン」 第15回 杉(桶、樽、酒林…)
白洲信哉=文筆家、日本伝統文化検定協会副会長

老舗酒蔵に杉玉=兵庫県姫路市(時事)
国土の7割近くが森林で覆われた木の国ジャパン。その40%を占める人工林の4割以上を占め、これから花粉の季節で厄介者のように扱われている杉だが、かつては青森から、かの屋久杉まで全国各地に点々と、二千メートルの高山から海辺近く、温暖で雨の多い地域から雪深く寒さ厳しい地にも天然の杉林が自生していた。磨製石器を手にし、樹木を切るようになった遠い昔、無くてはならない木材として僕らと共に生きてきた。記紀(古事記と日本書紀)によると地上最初の君主・番能邇邇芸命(ほのににぎのみこと)は、その名からニギニギしく豊かに稲穂をたたえ、「豊葦原水穂国(とよあしはらのみずほのくに)」に降り立った。昨今のお米券ではないが、わが国の象徴である稲作を僕ら文明の始まりとするなら、重要な因子として杉も加えたい。
弥生時代の稲作遺跡として著名な登呂遺跡では、ノコギリのような道具もない時代、広大な水田の畦(あぜ)道全てに杉の矢板を巡らせ、補強していた。杉は板目でも柾(まさ)目でも割りやすく、軽量で加工に優れ、真っすぐ伸びる通直性から高蔵の柱材でも強度があるなど多用された。
「新酒搾りたて」に「立春朝搾り」とこれから新酒が販売されるが、杉は日本酒との関わり合いも古く、万葉の頃より「うまさけを三輪のはふりが祝ふ杉…」と、わが国最古参大和大神(おおみわ)神社のご神木・巳の杉に天降(あまくだ)り、カミの分身である杉玉(酒林=さかばやし)が奉納され、新酒を寿(ことほ)ぐ。寒仕込みに蔵元店先につるされる杉玉はその名残だが、江戸時代に酒樽(だる)は焼きものから杉製に代わり、樽(たる)に染み込んだ杉の香りに防腐作用のあるその新芽を漬け出荷し、樽酒と珍重した。また、水にも浮き、ばらすのも簡単、古材も薄く削ることで何度もリサイクル、薄く割った板材は元の木より大きな桶(おけ)や樽になり、重い焼きものの壺(つぼ)や甕(かめ)に変わる輸送にも用いられる。酒の醸造後には味噌(みそ)や醤油(しょうゆ)に転用、運搬の和船から橋や箸に至るまで杉はさまざまな場面で重宝されていく。
1609年に日本を訪れたスペイン人ドン・ロドリゴは「日本にはたくさんの都市があるが、その都市は広くて大きく、人口も多く、また清潔で秩序もよく整っている。欧州の都市でこれに比較できるものはない」と述べた。当時、京の人口80万の都市衛生の縁の下の力持ちが杉の担桶(たご)で、大桶に蓄え農地に肥料として還元された。一般にはわが国の「木の文化」の代表として、檜(ひのき)や樟(くすのき)が挙げられるとは思う。社寺などの重要な建物に仏像など上層階級の中で補助的な材料にすぎなかったかもしれないが、一属一種日本固有の割烈(かつれつ)性に優れた杉は、当然気候風土に向いて稲作と並走するように、技術革新の名脇役として無くてはならない庶民の生活材だった。
「クイズで肩慣らし」 第91回=「歳時記」
~伝統文化に関するさまざまな話題をクイズ形式でお届けします~

鬼退治の様子を描いた歌川国芳の浮世絵
第91回
問題:平安時代の京都で姫を誘拐するなど悪事を重ね、源頼光とその家来の四天王に退治されたとされる、能の「大江山」に登場する大酒飲みの鬼の名前は何でしょう。(答えと解説は次号で)

二重構造の湯飲みは戦後、輸出先のアメリカで「ダブルカップ」と呼ばれて人気を博した。
【前回クイズの問題と答え・解説】
問題:今年の干支(えと)でもある馬の絵が特徴の陶磁器(写真)は何という名前でしょう。
答え:大堀相馬焼
解説:大堀相馬焼は、福島県浪江町で江戸時代から300年以上続くやきものの総称です。「走り駒」や「左馬(ひだりうま)」と呼ばれる馬の絵が描かれていることや青ひび模様、熱い飲み物を入れて持っても熱さを感じない二重焼が特徴です。東日本大震災後、窯のあった大堀地区が帰還困難区域として立ち入りが制限されたため避難先で制作を続けていましたが、最近になって1軒の窯元が町での営業再開を果たしました。左向きの馬は縁起物で、「右にでるものはない」や、「うま」を逆から読むと「まう(舞う)」になることから「福を呼ぶ」「商売繁盛」などの意味があります。
伝検協会だより
▼第3回伝検の表彰者が決まりました。今回は計9人です。2級は最高正答率85%の成績を収めた女性に最優秀賞を、それに続く正答率上位2人(2位1人、3位1人)に優秀賞をそれぞれ授与します。3級は最高正答率97%で並んだ2人に最優秀賞、3位タイの2人に優秀賞を授与します。また、13歳7カ月の女性と81歳1カ月の男性が3級に合格し、それぞれ歴代最年少、最年長合格記録を更新しました。2人は特別賞で表彰します。表彰状と記念品は後日、発送します。なお、団体受験は表彰基準を満たしませんでした。
▼ご報告が遅くなりましたが、1月14日(水)午前に皇居・
https://www.youtube.com/watch?
【編集後記】
二十四節気の「大寒」に入って1週間余り。今は一年でいちばん寒さが厳しくなる頃です。協会のある東銀座も冷たい風が吹き、首をすくめて歩く人をみます。しかし厳しい時期を過ぎれば、「立春」がやってきます。あすからは七十二候でいう大寒の末候「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」。春の気配を感じたニワトリが卵を産み始める頃となります。新しい暖かい日々を待ちたいと思います。