伝統文化を知る

2024.09.12

伝検通信(メルマガ)

週刊メールマガジン「伝検通信」 第23号

週刊メールマガジン「伝検通信」第23号をお届けします。

今号のトップ記事は、漆の技術を活用して制作されたギターの話題です。

「クイズで肩慣らし」は前回クイズの答え・解説と、食文化・歳時記分野からの出題です。

8月末までにメルマガ登録された方を対象にした「伝検公式テキスト」プレゼントキャンペーンの抽選を9月10日(火)に行い、当選者100人と補欠当選者10人が決まりました。

当選者にはあす13日(金)、ドメイン名「denken-test.jp」のアドレスから「伝検公式テキスト当選のお知らせ」という件名のメールで通知します。その際、賞品の発送先をメール内の記入フォームからお答えいただきますが、期限までにお答えがない場合は当選を辞退されたとみなし、補欠当選者を繰り上げる措置を取らせていただきます。あらかじめご承知おきください。なお、当選者の発表は個別の通知メールをもって替えさせていただきます。

賞品の発送開始は9月27日(火)を予定しています。

当選の権利は「伝検通信」読者ご本人のみ有効で、譲渡はできません。電話やメールでの当選結果のご質問にはお答えできませんので、ご了承ください。


目次

・ 次の一手は「漆ギター」=新しい香川漆器模索=
・ 「クイズで肩慣らし」第23回(食文化・歳時記)=「秋の行事」
・ 伝検協会だより


次の一手は「漆ギター」=新しい香川漆器模索=

写真上/漆ギターを手に取材を受ける漆芸家の松本光太さん=香川県綾川町
写真下/栗林公園内の物産館「栗林庵」に並ぶ香川漆器=高松市

多彩で優雅な色漆が美しい香川県の伝統的工芸品「香川漆器」。漆芸工房「さぬきうるし Sinra(しんら)」(香川県綾川町)の漆芸家、松本光太さんは現在、新たな挑戦として「漆ギター」を手掛けている。大量生産のプラスチック製食器の普及などにより衰退し続けている日本の漆芸産業だが、「漆器に興味のない人にも手に取ってもらえるような作品を作りたい」と力を込める。

◇続く「若手の漆芸離れ」

国や県の伝統的工芸品に指定されている香川漆器は、江戸時代に高松藩主が保護したことが始まりといわれ、後期に漆工職人である玉楮象谷(たまかじ・ぞうこく)が技法を確立。蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)、後藤塗(ごとうぬり)、象谷塗(ぞうこくぬり)の五つが代表的な技法だ。

これまで、多くの重要無形文化財保持者(人間国宝)を生んでいるが、現在、香川漆器で生計を立てている漆芸家はごくわずか。県によると、高松工芸高校(高松市)には塗りや加飾といった漆芸の技法を教える漆芸科があったが、2003年に生徒の募集を停止し、現在は新設された工芸科の選択コースの一つになっている。同校の漆芸科を卒業した松本さんも「高校で漆芸を専門に扱うところがなくなり、若手の漆芸離れが加速した」と嘆く。

こうした危機感を背景に、松本さんが起爆剤の一つと位置付けるのが、エレキギターの表面に漆を施した漆ギター「サヌキノオト」。たまたま友人から譲り受けたギターを手にした時に、「(漆塗りの)キャンバスにしてみたい」とひらめいたという。

◇未来見据え、新たな可能性模索

最初の作品に用いた技法は蒟醤。漆を十数回塗り重ね、特殊な蒟醤刀で文様を彫り、その溝に色漆を埋めた上で、表面を平らに研ぐことによって文様を描く。「柔らかさの中に力強さを感じてもらえる作品になった」と松本さん。装飾品ではなく、「演者が普通のギターとして弾くことができるものにしたい」と、音色や弾き心地にもこだわった。

松本さんはまた、漆器が日常的に使うものから離れてしまっている現状を危惧している。子どもたちが漆器に触れる機会が減る中、漆器をより身近なものとして捉えてもらおうと、出身校でもある地元の小学校に漆器を無償提供。「小さな頃から漆に親しんでこそ、大人になっても使い続けてくれるはず」と期待を込めながら、(1)毎日使いやすいものである(2)長く使い続けられる丈夫さがある(3)本物の素材を使う―ことをモットーに作品を作り続けている。

香川漆器の技術や伝統を大切にしつつも、松本さんが見据えるのは未来。「まずは関心を持ってもらうことが大切だ」と語り、新たな漆器の可能性を模索している。


「クイズで肩慣らし」第23回(食文化・歳時記)=「秋の行事」

~伝検公式テキスト(9月20日先行発売予定)のジャンルごとに出題します~

秋の行事、お月見

問題:秋の行事として、旧暦8月15日の中秋の名月「十五夜」のお月見が有名ですが、昔は十五夜と同様に大切にされていた「( )夜」というお月見の日がありました。( )に入る漢数字は何でしょうか。
(答えと解説は次号で)


美しい色や形の干菓子「和三盆」

【前回の問題と答え・解説】
問題:目にも美しい色や形の干菓子(ひがし)「和三盆」。香川県と徳島県で生産される高級砂糖「和三盆糖」のみで作られていますが、その和三盆糖は何という品種のサトウキビから作られるでしょう。

答え:竹糖(ちくとう)

解説:上品な味で有名な干菓子「和三盆」は、打ち粉やつなぎ(米粉など)を使用せず、香川県と徳島県で生産される「竹糖」という在来品種のサトウキビを原料とする和三盆糖から作られています。江戸時代に讃岐(現・香川県)の医師・向山周慶(さきやま・しゅうけい)によって完成されました。一方、和三盆と見た目が似ている「落雁(らくがん)」は、米、麦、豆といった穀類から作った粉に砂糖や水あめなどを加え、木型などに押し固めて乾燥させた干菓子(ひがし)です。


伝検協会だより

▼京都の「花政」をご存知でしょうか? 文久元年(1861)創業の老舗花屋さん。河原町三条に店を構える前は、伏見で花作りを始めた初代が定期的に高瀬川を舟で上り、神社仏閣に花を納めていたそうです。その5代目主人・藤田修作さんの展覧会が9月13日(金)に始まります。弊会の近衞忠大会長が会場構成を手掛け、白洲信哉副会長が案内板やリーフレットに一文を寄せています。会期は10月8日(火)まで。京都でお時間があれば、ぜひお越しください。

詳細はこちら→京都 花政 藤田修作 展 花を 花と見て 花と見ず | kojin kyoto (kojin-kyoto.com)

▼ECサイト「藤巻百貨店」を運営するcaramo(東京・渋谷)が、先週、東急プラザ銀座で開催したリアルイベント「藤巻百貨展」に行ってきました。江戸切子や富山県高岡市のスズ鋳物、香川漆器などの工芸品の展示・販売に加え、江戸切子のカットや奈良一刀彫の絵付けといった体験型のワークショップも開かれ、多くの人でにぎわっていました。藤巻百貨店の担当者は「お客さまには、本物の伝統工芸品とともに、日本各地から集まった職人の方々と触れ合う機会にしてほしい」と話していました。


編集後記

伝検通信第23号をお届けしました。やっと朝晩が少し涼しくなり、落ち着いた日々となりました。芸術の秋、食欲の秋、読書の秋。夏の疲れを癒やし、英気を養っていきましょう。伝検申し込みも間もなく始まります。ぜひ受験してみてください。

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