2026.01.27
喜多能楽堂で異色の舞踊公演―映画「国宝」が結んだ縁

ジャンルは違っても、踊りに対する熱い思いでつながる谷口裕和さん(左)と田中泯さん=東京都品川区の喜多能楽堂
大改修を経て昨年3月に再開場し、能楽以外での利用も進めている東京・喜多能楽堂で2月28日、3月1日の両日、ユニークな舞踊公演が行われます。映画「国宝」で人間国宝の歌舞伎女形を演じたダンサーで俳優の田中泯さんと、同作の出演者に踊りの手ほどきをした日本舞踊家の谷口裕和さんが、それぞれの踊りの世界を披露する「独独座(どくどくざ)―コレモコテン」です。
田中さんはクラシックバレエ、モダンダンスを学んでから、ダンサーとして独自の活動を展開。映画「たそがれ清兵衛」に出演して以来、俳優としても活躍しています。一方、谷口さんは幼い頃から日本舞踊を習い、十世西川扇藏、梅津貴昶(うめづ・たかあき)に師事した後、流派に所属しない舞踊家として活動してきました。
日本舞踊は歌舞伎の演技や所作の基礎となるものです。歌舞伎俳優の舞踊指導も行っている谷口さんは、「国宝」では田中さんのほか、吉沢亮さんや横浜流星さんらにまず、すり足で歩くこととお辞儀の仕方から教えたといいます。「基本の形は教えますが、全ては直さないというというのが僕の考え方。皆さん、それぞれの良さがあるので、その方の持ち味が出る踊りを踊ってもらいたいからです」
映画の中で田中さんと吉沢さんが踊る「鷺娘」は、人間の男との道ならぬ恋に苦しむ鷺の精の姿をドラマチックに描いた女形舞踊です。田中さんにこの踊りを教えることで、谷口さんにも学びがあったといいます。「踊りで一番大切なのは情景だと思っていますが、泯さんの鷺の精は背中がグッと動いて情景があふれ出るようでした。自分の会で『鷺娘』を踊った時、田中泯さんの『鷺娘』がよぎりました」
感じるままに自由に踊ることを追求してきた田中さんも伝統的な日本の踊りから刺激を受け、「国宝」の撮影が終わってからも谷口さんのもとへ日本舞踊の稽古に通い続けているそうです。「自由に踊るというのは決して自由ではなく、できることをやっているわけです。先生から習っているのはできないことだらけですが、できないから面白い。僕は今まで伝統的な踊りには触れてきませんでしたが、これから不思議な転換をしていくと思います」
「独独座」という公演名には、それぞれの歩みを見詰め直すとともに新たな試みに心臓が「ドクドク」と拍動する意味が込められています。今回は谷口さんの地唄舞(公演回により「雪」または「葵の上」)、田中さんによる即興「少な少なに感情す」、谷口さんによる長唄舞踊(同「娘道成寺」または「船弁慶」)の3演目で構成。谷口さんは紋付はかま姿の素踊り、田中さんは「袖を通すと踊りたくなる」という山本耀司の洋服で踊ります。