伝統文化を知る

2024.08.29

伝検通信(メルマガ)

週刊メールマガジン「伝検通信」 第21号

週刊メールマガジン「伝検通信」第21号をお届けします。

今号のトップ記事は、歌舞伎の制作・興行を手掛ける松竹の「こども歌舞伎スクール寺子屋」の話題です。

「クイズで肩慣らし」は前回クイズの答え・解説と、伝統色・文様分野からの出題です。

伝検公式サイトでは、2級と3級の模擬試験(練習問題)を掲載しています。
ぜひ腕試しとしてご覧ください。

2級模擬試験
https://denken-test.jp/culture_industry/805/

3級模擬試験
https://denken-test.jp/culture_industry/803/


目次

・ 伝統文化の担い手育成=松竹が「歌舞伎寺子屋」
・ 「クイズで肩慣らし」第21回(伝統色・文様)=「空の色」
・ 伝検協会だより


伝統文化の担い手育成=松竹が「歌舞伎寺子屋」

公演に向け稽古に励む子どもたち(写真上)
松竹のこども歌舞伎「贋作桃太郎 百桃かたり」(写真下=いずれも松竹提供)

伝統文化の担い手を育てていかなければ、知ってもらう前にその文化自体がなくなってしまう―。歌舞伎の制作・興行を手掛ける松竹は東京・東銀座の歌舞伎座内に「こども歌舞伎スクール寺子屋」を開き、歌舞伎の演技や日本の礼儀作法などを教えている。日本舞踊部門の統括講師を務める藤間勘十郎さんは、将来への危機感をにじませながらも「親子3代で楽しめる歌舞伎にしていきたい。寺子屋で学んだ中から歌舞伎俳優や日本舞踊家になる子どもがたくさん出てくれるとうれしい」と笑顔で前を向く。

◇ファンの裾野拡大へ

ぴあ総合研究所の「ライブ・エンタテインメント白書」によると、歌舞伎の市場規模は2000年以降、コロナ禍で落ち込んだ2020年など数年を除き、ほぼ200億~250億円規模で推移しているが、歌舞伎界で先行きへの懸念は強い。松竹は「歌舞伎をはじめとする伝統芸能は観客が世代交代し続けることが大切。若い人にも興味を持ってもらい、裾野を広げなければならない」と受け止めている。勘十郎さんも「現在、歌舞伎の興行に携わるのは数百人程度にすぎない。このままでは歌舞伎文化が残せなくなるかもしれない」と顔を曇らせる。

松竹は2014年に、歌舞伎を通して日本の伝統文化を体験してもらうとともに、若手の教育や育成を目的として、寺子屋を開校。対象は4歳から中学生までで、現在、約120人が学んでいる。

授業は「基礎」、次に「発展」のコースが各1年間あり、3年目以降、希望者は「前進」に進む。さらに歌舞伎に関わる職業に興味がある場合は、中学生部門の「歌舞伎」「女子舞踊」コースが用意されている。基礎コースでは、浴衣の着付けや和装での立ち居振る舞い、礼に始まり礼に終わるといった日本の伝統的な礼儀作法に加え、歌舞伎や日本舞踊の演技の基本を学ぶ。発展、前進コースでは、より実践的な稽古などを行い、「歌舞伎の子役養成にもつながっている」(松竹)という。

◇和を知り、感性を磨く

今月には、寺子屋の子どもたちが、オリジナル舞踊劇「贋作桃太郎 百桃(もももも)かたり」を歌舞伎座タワーのホールで公演。昔話「桃太郎」を基に、松竹の歌舞伎脚本家の戸部和久さんが書き下ろし、勘十郎さんが演出・振り付けを手掛けた。

前進コースの18人が参加し、2日間で約230人の観客を前に1年間の稽古の成果を披露。戸部さんは「(伝統を伝えるためには)道具や衣装はもちろん、スタッフも一流をそろえ、本物を子どもたちに経験させることが大切」と指摘。せりふや振り付けなども子ども向けではなく、大人と同じにした。「伝統文化に挑ませたい」(勘十郎さん)というのが狙いだ。

桃太郎役の岩瀬颯太さん=小学6年=は公演を終え、「これからも多くの人に日本の伝統文化を伝え、海外にも広めていきたい」と夢を語る。グローバル化が進む一方で、若い世代を中心に伝統文化に触れる機会が少なくなっており、戸部さんは「和の心を知ることが、他国の文化の理解につながり、子どもたちの豊かな感性を磨くことになる」と意義を強調している。


「クイズで肩慣らし」第21回(伝統色・文様)=「空の色」

~伝検公式テキスト(9月20日先行発売予定)のジャンルごとに出題します~

青い空と日暮れの赤が混じり、薄紫に染まる空

第21回
問題:中国から伝わった日本の暦の一つ、二十四節気(にじゅうしせっき)では既に秋。この季節の夕暮れ時、青い空と日暮れの赤が混じり薄紫に染まります。昔から空にもさまざまな色名が付けられています。この空の色は『○○空色』と呼ばれていますが、○○に入る言葉は何でしょう。
(答えと解説は次号で)


喜多川歌麿 「寛政三美人」の模写

【前回の問題と答え・解説】
問題:江戸時代の浮世絵師・喜多川歌麿による美人画で、涼やかな夏の浮世絵として思い浮かぶ「寛政三美人」。これを出版、販売した版元は誰でしょう。

答え:蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)

解説:「寛政三美人」は、美人画を得意とする江戸時代後期の浮世絵師・喜多川歌麿の代表作の一つ。版元の蔦屋重三郎が出版、宣伝、販売を手掛け、歌麿と3人の美女の人気で飛ぶように売れたそうです。絵の上段の女性は浄瑠璃・豊本節(とみもとぶし)の名取で吉原の芸者「富本豊(とみもととよ)ひな」。下段の2人は、いずれも寺社の境内などで茶を供し道行く人を休ませた水茶屋店の看板娘で、左が両国薬研堀(りょうごくやげんぼり)の「高島屋おひさ」、右が浅草随身門(あさくさずいじんもん)前の「難波屋おひさ」です。なお、2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう」は蔦屋重三郎が主人公です。


伝検協会だより

▼弊会では日本の未来を担う若い世代に伝統文化の価値を知っていただき、どんどん伝検を受験していただきたいと願っています。そのためにこのほど、10人以上で受け付ける団体受験の学生割引を設定、受験料(消費税込み)を2級7700円(通常9900円)、3級5500円(同7480円)としました。先日も、ある高校から受験に関する問い合わせをいただきたばかりですが、学生の皆さまに受験がしやすい環境を整えていきます。なお、一般の団体割引は近く公式サイトなどでお知らせします。

▼三菱地所レジデンスが前週、丸ビル(東京・丸の内)で開いた伝統工芸展「一生ものを訪ねて」に行ってきました。南部鉄器(岩手県)、輪島塗(石川県)、瀬戸染付焼(愛知県)、手描友禅(京都府)、紀州桐箪笥(和歌山県)など、各地の工芸品を展示・販売。「伝統工芸の継承―輪島塗の復興を目指して」などと題した、工芸家らによるトークショーも行われました。同社の担当者は「日本の伝統工芸品の素晴らしさを発信する場所。需要減少や後継者不足といった問題を抱える工芸家の方々の一助になれば」と話していました。


編集後記

伝検通信第21号をお届けしました。暦の上では「秋」。朝晩に秋の風がかすかに感じられるようになってきました。暑さで疲れた体を癒やすのは食と芸術。さまざまな展覧会に行き、おいしいものを食べまくる秋にします。

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