神霊や過去の幽霊など、霊的な存在が主人公となる能の形式の名称は何でしょう。

夢幻能(むげんのう)

能は大きく「現在能」と「夢幻能」に分けられます。生きた人間のドラマを現在進行形で描くのが「現在能」。一方、「夢幻能」は神や鬼、幽霊といった異界からやって来た霊的存在が昔を思い、その土地にまつわる伝説を振り返ったり、過去の物語を再現したりするのが特徴です。人間の心理を深く描き出せる「夢幻能」は、世阿弥が父の観阿弥が志した幽玄を受け継いで確立した劇形式です。

「和」を知る・「和」を楽しむ・「和」を伝える日本のスペシャリストになろう!

週刊メールマガジン「伝検通信」第10号をお届けします。

伝検公式ウェブサイトには、伝検3級と2級の模擬試験(練習問題)が掲載されています。ぜひレベル感の把握にお役立てください。

3級模擬試験
https://denken-test.jp/culture_industry/803/

2級模擬試験
https://denken-test.jp/culture_industry/805/

今号の宙ちゃんの「伝統文化一直線」は、「AKARIシリーズに思う」です。

「クイズで肩慣らし」は前回クイズの答え・解説と、和紙・染織分野からの出題です。

7月末までにメルマガ登録した方の中から、抽選で100人に公式テキスト(9月1日刊行予定)をプレゼントするキャンペーンも引き続き実施中です。


目次

・ 宙ちゃんの「伝統文化一直線」 第6回 AKARIシリーズに思う
・ 「クイズで肩慣らし」第10回(和紙・染織)=「紬」
・ 伝検協会だより


宙ちゃんの「伝統文化一直線」 第6回 AKARIシリーズに思う

近藤宙時=日本伝統文化検定協会理事

「AKARI」のフロアランプ

70年以上前、岐阜提灯(ぎふぢょうちん)と芸術家イサム・ノグチ※のコラボレーションによって生み出された「AKARI」シリーズと呼ばれる照明は、ペンダントライト、スタンドライトからテーブルランプまで200種類以上ものバリエーションを持ちます。どれも和室はもちろんのこと、洋間にも、高層ビルの大ホールにさえピタリとくるだけでなく、近未来を描いた映画の中でも使われそうなアバンギャルド(前衛的)な雰囲気と同時に、人肌のような程よい温もりと、童心に返るような懐かしさを感じさせます。

その秘密は何でしょうか。恐らく、時代を超越したフォルムを形作っているのは、最高級の行灯(あんどん)として江戸時代には将軍家や大奥でも使われた岐阜提灯の伝統技法そのものだからでしょう。

岐阜提灯の特徴は、骨として用いる竹ひごが細く、輪を重ねるのではなく螺旋(らせん)状に巻き付けて骨組みを作ること、そしてその骨組みには美濃和紙が張られていることです。もちろん、全ての工程が職人の手によってなされます。

しかも驚くことに、「AKARI」シリーズは提灯の最大の機能をちゃんと持っています。つまり、折り畳めるのです。竹ひごと美濃和紙で作られているから、見た目よりもはるかに軽く、持ち運びやすい。岐阜提灯のコア・コンピタンス(競合品にはない強み)が丸ごと詰まっているのが「AKARI」シリーズです。

日本の歴史、風土から生まれた伝統工芸の神髄をいささかも損なわずに、私的な和室から公的なホールまで、また現代だけでなく未来まで、人々を温もりのある明かりで包み続けてくれる光の彫刻。「AKARI」シリーズは、ともすれば古臭いもの、過去のものと思われがちな伝統工芸品の進むべき道を示していると思います。

歴史をひもとくと、イサム・ノグチが岐阜提灯に新たな命を吹き込んだことに通じる例は少なくありません。戦国時代から江戸初期にかけての大名茶人古田織部は、それまできれいな円形をしていた茶碗や鉢をひょうげ(面白おかしくデフォルメ)させて、ダリのアートにも通じるような織部焼をプロデュースしました。織部焼は現代でも日本の食卓を飾っていますし、尾形光琳はもちろんのこと、酒井抱一や葛飾北斎も陶磁器や漆器の下絵を描いています。

次代のイサム・ノグチや古田織部が伝統工芸をアップデートしてくれることを楽しみにしています。

※イサム・ノグチ(1904~1988) 20世紀を代表する彫刻家。英文学者で詩人の野口米次郎と作家レオニー・ギルモアとの間に米ロサンゼルスで生まれ、少年期を日本で過ごした。香川県高松市牟礼町のアトリエ跡はイサム・ノグチ庭園美術館となっている。


「クイズで肩慣らし」第10回(和紙・染織)=「紬」

~伝検公式テキスト(9月1日刊行予定)のジャンルごとに出題します~

写真/紬を織る様子

第10回
問題:日本の紬(つむぎ)は、ある沖縄の離島に中国の養蚕技術が持ち込まれたことにより発達し、その後沖縄本島、奄美大島を経て本土に伝えられ、各地に広まりました。その島はどこでしょう。 

【前回の答えと解説】
問題:ガラスの表面に細かい線を刻むことで文様を表現する「江戸切子」。代表的な文様の一つで、切子面の繊細なカットが光を受けて輝くさまを名付けた写真の文様名は何でしょう。

答え:魚子文(ななこもん)

解説:江戸切子は、ガラスの表面に刻み込まれた美しい文様が特徴。そのデザインは、いくつかの縁起の良い文様の組み合わせから成ります。この切子写真の文様は、切子面の細やかな光の反射が、まるで魚の卵が沢山連なっているように見えることから「魚子文(ななこもん)」と呼ばれています。古くは「魚」を 「な」と読んでいたことに由来します。魚子文は、金工や染織などにも見られる日本の伝統的な意匠で、 子孫繁栄の意味が込められています。


伝検協会だより

▼第1回伝検の試験日程(2級・3級)が決まりました。11月29日から来年1月31日までです。申込期間は9月2日から来年1月28日までです。期間になるとマイページより申し込みが可能になります。期間中は何度でも受験ができます。3級を受験し、合格後に期間内で予約ができれば2級を受験することも可能です。

▼伝検公式テキストの概要が固まりました。A5版で280ページ。価格は3300円(税込)です。9月1日の発売を予定しています。表紙は伝検のロゴマークを真ん中に据え、検定の学習・出題分野である①陶磁器・ガラス②金工・木漆工③和紙・染織④建築・庭園・美術⑤伝統色・文様⑥茶道・和菓子・日本茶⑦食文化・歳時記⑧芸能―の8ジャンルのイメージ写真を周りに並べました。
https://denken-test.jp/official_text/


編集後記

伝検通信が第10号まできました。これはひとえに読んでくださっている皆様のおかげです。心より御礼申し上げます。本通信の感想、企画への注文などもお待ちしております(こちらへどうぞ→info@denken-test.jp)。引き続き伝検通信をよろしくお願いします。